テキーラ1ml

よい終末を!

「呪い、叶え、給え!」のこと

 「呪い、叶え、給え!」という異世界もの短編をムーンライトノベルズに投稿しました。政略結婚で婚約した無表情で感情ないタイプの王太子が呪いで少年に戻ったらなんだかめちゃくちゃ楽しそうです! みたいな話です。どんなや。春の短編祭2024という公式企画に参加しています。

 ここ一年ほど仕事が想定以上に捌けず、お話を書く時間がなかなか取れませんでした。コマ切れには書いていたんですけど、頭が回らなくてまとめられなかった。寝る時間もない感じだったので仕方ないのですが、お話は閉じてこそと考える派なので、完結させられないのはものすごくストレスであった。

 少し行き詰まりを感じた時は「普段やらないことをする」ようにしています。私は圧倒的に現代ものの書き手ですし、投稿作も短編はあまり多くないです。知らない分野のことを端的にまとめるのが苦手なのだと思う。なので、異世界ものの短編を書こうと決めたのでした。

 ちなみにものすごく行き詰まりを感じた時は「絶対にやりたくないことをする」ようにしています。行き詰るということは打開策が盲点になっているということで、思いつかないことは自分の苦手なことに潜んでいるのだろうと考えるからです。弱い紐帯の強み的な発想。好きなことや仲がいい人からは、新規性のある情報は得にくい。

 とても楽しく書きましたし、一年空かずに投稿できてすごくよかったです。ヤッター! ひさしぶりに完結させられて、完全に脳汁出てる。

 ツイッターにキャラの名前について等々つらつら書いたのですが、ツイートはすぐ流れてしまうし、昨今の様子を鑑みるとツイッターそのものがいつなくなるかわからないなあと思ったので、ここに加筆転記しておきます。活動報告に書かないのは、なろう・ムーンは歌詞について厳しいからです。

 

タイトル

 私はタイトルをつけるのが大変苦手です。「呪い、叶え、給え!」は、筋肉少女帯の「ノゾミ・カナエ・タマエ」を内容に合わせてもじり、漢字にし、「!」をつけたものです。タイトル全然思いつかなかった。私自身は筋肉少女帯にさほど詳しくなく、高校時代の同級生がオーケンのファンだったなあとちょっと懐かしく思い出したりしました。筋肉少女帯は私より上の世代がメインのファン層なので、友達に対して渋い趣味だなと思った記憶。

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 せっかくタイトルを借りたので、歌詞に出てくる蝶とか薔薇とか琥珀とかエメラルドとかも入れちゃえー、と更にお借りしました。リスペクトです! リスペクトと言えばなんでも許されるという安易な風潮。許してください。本当はレティクル座も入れたかったんですが、上手いこと入れられなかったので、悔しくて、二人を国内最大の望遠鏡を備えた天文台に行かせてみました。描写一行しかない。

 「ノゾミ・カナエ・タマエ」はこの演奏がすごくよいです。めちゃくちゃ惹きつけられる。

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キャラの名前

 私はキャラの名前をつけるのも大変苦手です。要は名づけの才能がないんやな。とりあえず外国語名なら語義・語源を、和名なら漢字の意味を絡めることにしています。

 今回のヒーローの名前は珍しく最初に決めました。試合に負けても勝負には勝つ執念深いタイプにしようと「勝利者」の意味を持つVictorを選び、「魔法が出てくるからフランス語圏の名前で『ヴィクトール』だな!」と決めました。「魔法が出てくるからフランス語圏の名前」ってなんじゃそらという感じですが、私の初投稿作「取り違えと運命の人」をイタリア語圏で魔法があまり普及していない国という設定にしていて、その時に近隣の魔法が盛んに使われている国はフランス語圏にしようと決めたので、それに従ったという単なる自分ルールです。決めごと作っとくとそれに基づいて判断すればいいから後が楽。

 週刊少年ジャンプといえば「友情・努力・勝利」のイメージですが、普段そういう熱い感じの世界を全然書かないので、ちょっと取り入れてみようと思いました。せっかくヒーローの名前の意味が勝利者なので、他のキャラもこの標語にちなんだもので名づけようと考えた訳です。行き詰っている時はそういう無茶な絡め方をします!

 友達いなさそうなヴィクトールに淡々とした友情を育ませたいなと思い、友の意味を持つような名前を検索したのですが、なかなか出てこない……! ようやく出てきたのが日本警察犬協会のドイツ語牡犬名一覧だったので、側近のアドヴィンくんはドイツ語圏出身の父親を持つことになりました。Adwin=良友。警察犬よありがとう。私のことも助けてくれた。でも、正直、これ、ドイツ語でもあんまメジャーな名前ではないんでないかな?

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 友情と勝利の枠が埋まったので、じゃあ努力……ああ、弟は出す必要があるから彼の名前をそれっぽいのにしよう! ついでに努力嫌いそうな名前負けのチャラいタイプにしよう! と安易に決めました。弟のエミールはそういうキャラ設定だったのですが、一応王子様だからか結果的にあんまりチャラい雰囲気にはならなかった。要領のいい次男坊感はきっちり出せたと思います。

 エミールも名前そのものを決めるのは実はちょっと難儀しました。印欧語で努力っぽい意味を持つ名前ってなかなか見つからない。これは単なる推測なんですけど、努力にあまり重きを置いていない文化圏だからじゃないかなと思うんですよ。過程より結果を重視する。だから力とか神とかに関するものはやたらあるんじゃないかしら。

 結局どうしたかというと、とにかく海外の名前一覧をいろいろ眺め、女性名のEmilyが「勤勉な」という意味を持つことを知ったので、男性形にすればいいのでは? という発想でエミールにしました。Émileは「勤勉な」という意味で載っているサイトもあれば、「勝利者」と出ているサイトもあって、言葉の解釈の幅の広さについて考えたり、男性と女性で求められる要素が違ったんだろうなと思ったりもしました。

 王族の名前は「ふさわしい高貴さがあるか」も重要ではないかと思っています。王様に奴隷によくある名前はつけないと思うし、もしあえてそうつけるならその意味が物語の根幹に関わらないとまずいのではなかろうか(例えば『忌み子として生まれた』とか『幼名はあえて卑しいものにする』とかですかね?)。という訳で、エミール(仮)に決めてから粛々と「エミール 王」「エミール 貴族」あたりで検索かけました。エミール王子が実在してほっとした記憶。

 あと、すごく単純な話なんですけど、キャラの名前を混同しないように、「文字数」「頭文字」「語尾」はなるべく別にするようにしています。例えば「ジェーン」と「ジューン」と「ジョーン」が同じ物語に出てきたら見分けがつらい……。「三つ子の使用人」とかそういうキャラづけはありでしょうけど、重要なキャラの場合は判別できないデメリットの方が多いような気がします。よほど活かせるギミックがないと駄目だし、私にはそんなアイデアないよ! エミールはそこらへんでもまあ及第点だったので、(仮)を取って正式採用した次第です。

 そんな感じで男子キャラの名前はいろいろ考えるところが多かったですし、三人とも愛着があります。結構今後の役に立つ経験を積めた気がするしよかったです。書くのに行き詰ったら「こいつら日本人だったら良友(よしとも)(つとむ)勝利(かつとし)だな!」とか思ったりしていたが。

 主人公のブランシュは「輝く」「色白で金髪の女性」という意味ありきでつけたので仕方ないのですが、自分でもブランシェと間違いそうになり、何度か検索と置換で確認しました。これからはなるべく間違いそうな名前はつけないようにしたいです……。とりあえず文化はかろうじて重なる部分があるくらいの距離という想定で、同じフランス語の名前にしました。昔話っぽい異世界って、距離と時間の感覚が現在の私達とは違うんじゃないかなと、なんとなく考えています。

 

国の名前

 名前を考えるのが本当に本当に苦手なので、国の名前を考えるのがつらくなり、結局ヴィクトールの国はフィレンツェのフランス語読みでフローランスとしてしまいました。笑ってくれていい。思いつかなかった。イタリアとフランス、どっちやんって一番思ったのは私や。意味は作中でもルビを振っているのですが「花の女神の国」「繁栄」です。こっちで力尽きてしまったので、ブランシュの国は結局「我が国」とかでごまかしてしまいました……。一回も名前出してない。土下座。

 

キャラの外見

 ヴィクトールは黒髪で紫の瞳で少しクールな雰囲気、背は高めで着痩せするタイプを想定していました。剣の鍛錬は結構しているはずなので、がっつり筋肉あるやろと思った(でも本人は頭使う方が好き)。最初は金の瞳の予定だったのですが(黒に映えるし魔族っぽくて好きだから)、「ブランシュの髪の色とかぶる……!」と気づいて紫の瞳に変えました。黒と紫の合わせは好きですが、派手さとインパクトは小さくなったかも。まあ陰気な男だからいいや。

 ブランシュは「金髪と抜けるように白い肌でお姫様っぽさが出せるとよいのかな?」と安易に決定。二人の髪が黒と金で対照的でいいかなあとも思った。書きどころがなくてやむ落ちしたんですけど、瞳は淡い緑を想定していました。青よりやわらかいイメージになるかなと思った。

 エミールは兄より華やかな雰囲気が出るといいかなと思って琥珀色の髪と紫の瞳にしました。背は高いけどひょろっとした感じ。けど全然鍛錬してないのではなくて、無駄のないしなやかな筋肉は持っていそうな。私の想像するTHE王子様の具現化。

 側近アドヴィンは外見出せなかったけど焦げ茶の髪に中肉中背のTHEモブな感じです。ちょっと可愛い系。いぬっころである。

 

書きたかったけど書けなかったりボツにしたりしたこと

  • フローランスの現王と息子達の確執(収拾つかない)
  • フローランスの現王が昔ブランシュの母に淡い恋心を抱いたりしていた(収拾つかない)
  • ヴィクトールが少年に戻ったら記憶も喪失(収拾つかない)
  • ブランシュと他国の姫君のキャットファイト(収拾つかない)
  • ブランシュが解呪のためにいろいろ試す(これは上手く入れ込めなかった己の能力の低さを反省しています)
  • 十年前のお誕生会の前にブランシュがフローランスでケガをした市民に偶然出会い偶然持っていたハンカチで手当てをしていたところを偶然目撃するヴィクトール(偶然に頼りすぎるのはよくないと週刊少年ジャンプ編集部から叱られる案件)

 

別に書く気ではなかったけど書いちゃったこと

 感想欄の返信がちょっと気に入ってしまったので、転記します。
 ヴィクトールが寿命が縮むことを「いつ死ぬかなんて誰にもわからないという観点から考えると、普通に生きているのとさほど違いはないのではないか?」と判断している件は投稿直前まで入れる予定など全くなかったのですが、なんとなく出てきたので「そうか、そうか、つまりきみはそんなやつなんだな」と思いながら採用しました。キングもチェスの駒の一つくらいに考えていると思います。自分に関しては割とドライ。

 チェスについては投稿前々日まで書く予定が全くなかったのですが、王太子だし頭脳系ゲーム好きそうじゃんこいつと思ったのと、「ああ、これはポーンがクイーンに成る話だな!」と思ったので唐突に入れ込んだのですが、意外と収まりがよかったです。

 こんな感じで突然思いついて入れたものがあたかも「最初から根幹をなすものとして登場を決めていましたが何か?」みたいな顔をして転がっていることが、自作には本当によくあります。おかしい。

 

 今回異世界ものを書いてみてとても楽しかったので、ぜひもっといろんな異世界ものを書こうと思いました。現代もの・異世界ものみたいな舞台設定に限らず、引き出しを増やしたいので、いろいろな話を書こうと思っています。ずっとホラーとミステリに憧れがある。ホラーは意味怖が書いてみたいし、ミステリはたぶんホワイダニットばっかり書く気がします。いや、どちらもまだ一文字も書いたことないんですが。

 また何か書けたら粛々と投稿いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!